「diorama」を知ることが、米津玄師を知る一番の近道なのかもしれない
『死神』を聴いていたら、なんだか「diorama」をもう一度聴きたくなった。
そう思ったのは私だけではないはず。なんだか雰囲気?ムード?が似てますよね。
ハチ名義ではなく、米津玄師名義で出したインディースアルバムなだけあって、チャレンジングで面白い楽曲が多いです。
そんな、「diorama」、一言でいうとこんなアルバムです。
異彩を放つ『vivi』が心臓を担っているアルバム
この記事では、「diorama」をもう一度聴きたくなるような情報をお届けします!
ぜひ最後までご覧ください!!
米津玄師「diorama」はどんなアルバム?
「diorama」は2012年5月16日にリリースされた、1枚目のオリジナルアルバムです。
当時まだ21歳。凄すぎて嫉妬もしません。
作詞、作曲、編曲、歌、演奏、動画、アートワーク、ミックスを全てひとりで手がけており、そのクリエイティビティのヤバさは言うまでもありません。
当時まだ21歳。凄すぎて嫉妬もしません。
アルバムの構想はその2年前から考えていたそうで、自身のインタビューによると、箱庭的な「街」の世界観を作りあげたいという気持ちがあったそう。
希薄な人間関係の中で、つながっているのか、つながっていないのかわからない。
そんな世界を表現してみたかったと語っています。
また、「diorama」はライブを前提とせずに作られた作品だそうで、「とにかくやりたいことを!」という思いが感じ取れるようなアルバムとなっています。
オフィシャルサイトのギャラリーに、アルバム世界につながる絵本を公開しているので気になる方は見てみてください。
米津玄師「diorama」の特徴
「diorama」を一度通して聴いてみるとわかるのですが、一つ大きな違和感(ギャップ)があります。
そうです。『vivi』です。
アルバムの中で、この曲が異彩を放っています。
急に曲調が変わるので、初めて聴いた時はかなり驚きますよね。
しかし、むしろこのアルバム、実は『vivi』を中心に構成されているのではないかと筆者は考察しています。
その理由は2つあります。
- インタビューでの発言
- 『vivi』前後の曲の構成
それぞれ解説していきます。
インタビューでの発言
米津玄師は自身のインタビューで、『vivi』について、「自分の内面世界に一番近いのが、この曲だと思います。」と話しています。
この発言から、『vivi』が彼にとっても大切な作品なのだと推察できます。
さらに続けて、「結局どうやってもわかりあえない。わかりあえたと思っても、すれ違いって必ずあるんですよ。そんな悲しさを描いているのが『vivi』ですね。」とも話しています。
この発言から、『vivi』は「diorama」のテーマをダイレクトに表現した楽曲であることもわかりますね。
つまり、『vivi』はこのアルバムを語る上で欠かせない存在なわけです。
『vivi』前後の曲の構成
『vivi』がこのアルバムの心臓であると考察する理由の2つ目は、収録曲の構成です。
ここでは、ざっくり「『vivi』の前」「『vivi』の後」に分けて考えていきます。
『vivi』の前
『vivi』の前は、次の6曲からなります。
- 1. 街
- 2. ゴーゴー幽霊船
- 3. 駄菓子屋商売
- 4. caribou
- 5. あめふり婦人
- 6. ディスコバルーン
この6曲は、総じてダンサブル(乗れる)で、パワフルな楽曲だと言えます。
それだけではなく、サウンドがいわゆるJ-POPとは違います。
あえて「ヘンな音」と言わせてください。
この「ヘンな音」と不協和音が独特の不気味さ、「米津感」を生み出しています。
つまり、一言でいうと
カッコ良さと不気味さが詰まったパート
ということです。
7. vivi
そして7曲目に『vivi』が流れます。
6曲目は前半の中で最もパワフルなサウンドの『ディスコバルーン』ですから、まるでジェットコースターの急降下のような、一発逆転ホームランのような。
その衝撃の大きさは言うまでもありません。
ここまで丁寧に設計されていると、『vivi』に聴き入ってしまうことから抗えません。
それはつまり、このアルバム「diorama」の想いをダイレクトに受け取ることを意味します。
『vivi』の後
『vivi』の後は、次の7曲からなります。
- 8. トイパトリオット
- 9. 恋と病熱
- 10. Black Sheep
- 11. 乾涸びたバスひとつ
- 12. 首なし閑古鳥
- 13. 心像放映
- 14. 抄本
前半と打って変わって、この7曲はダンサブルというより、儚さ・静けさを持った、「聴き入る音楽」が多いです。まるで『vivi』の余韻を残すかのよう。
実際に前半と比較すると、次のような変化が見られます。
- 全体的に曲のテンポやリズムが落ち着いた
- 「ヘンな音」をあまり感じず、ポップさのあるサウンドが目立つようになった
- 不気味さは減り、より感情に訴えるような楽曲が揃った
私はこの楽曲の流れから、「diorama」には1つの大きなストーリーが潜んでいるのではないかと踏んでいます。そうだとすると、『vivi』は大きな転換点だと言えるのではないでしょうか。
「diorama」の収録曲を徹底解説
ここからは、個々の楽曲について見ていきます。すべての楽曲をここから視聴することができます。
街
アルバムの表紙に街が描かれていることからもわかるように、このアルバムの顔となる大切な楽曲。
行進曲のような雰囲気がありつつも、どこか儚さを感じます。
ゴーゴー幽霊船
ドラムンベースのリズムに胸が高鳴ること間違いなし。
イントロなどで入る笛のサウンドにどこか異国情緒を感じます。
駄菓子屋商売
四つ打ちのリズムが癖になる楽曲。
ギターのサウンドが風変わりで、「ヘンな音」が好きな人にはたまりません。
caribou
跳ねたリズムと気怠げなメロディという変わった化学反応が面白い楽曲。
Cメロからリズムが3拍子に変化するなど、意外性の大きな楽曲です。
あめふり婦人
疾走感が心地よいロックナンバー。
サビの裏声とスピード感がめちゃくちゃ楽しいです。聴いた後「すげぇ…」としばらく静止してしまいます。
ディスコバルーン
重低音が耳を刺激するハードロックな楽曲。
イヤホンで聴かないと良さが半減してしまうかも。
vivi
インタビューで、「自分の内面世界に一番近いのが、この曲だ」と語っている楽曲。
前の6曲から曲調がガラリと変わると同時にその世界観に引き込まれます。
トイパトリオット
タイトルは「Toy Patriot」、つまり「おもちゃの愛国者」を意味します。
「おもちゃの自分」が「君(=所有者?)」を守るために傷つける、哀しい歌。
恋と病熱
一言で言うなら「聴き入るロック」です。
歌詞に共感する人も多いはず。
Black Sheep
スローなテンポにグルーヴィーなリズム、透明感のあるボーカル。
一度ハマると抜け出せないタイプの楽曲です。
乾涸びたバスひとつ
リズムパターンも構成もシンプルなのに、心動かされる楽曲。
「ドラマの最終回」のようなイメージを抱きました。
首なし閑古鳥
スペインの風を感じるギターサウンドとポップなメロディが、リスナーの耳を楽しませる楽曲。
昼も夜も似合う楽曲だなあと感じます。
心像放映
タイトルから不気味なイメージを持ってしまいそうですが、「diorama」の中ではかなりポップな楽曲です。
Aメロのリズム感が個人的に好きです。
抄本
読み方は「しょうほん」で、「元となる本の内容を抜き書きして作った本や文書」を意味します。
前半の2分弱はインストのみですが、なぜか引き込まれしまいます。
おわりに
いかがでしたか?「diorama」をもう一度聴いてみたくなりましたか?
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最後まで見ていただきありがとうございました!!