これは、周りの「米津ファン」より一歩先を行く考察です。
今のJ-POPの代表格といえば、やはり米津玄師でしょう。
そんな米津玄師の5thアルバム「STRAY SHEEP」、その大ヒットの裏にはものすごい工夫が見られました。
米津玄師ファンもそうでない人も、「STRAY SHEEP」がもっと好きになるような情報・考察を余すことなくお伝えします!
ぜひ最後までご覧ください!
米津玄師「STRAY SHEEP」はどんなアルバム?
「STRAY SHEEP」(読み方:ストレイシープ) は2020年8月5日に発売された米津玄師の5thアルバムです。
ドラマ「MIU404」主題歌の『感電』や、ドラマ「アンナチュラル」主題歌の『Lemon』などのタイアップ曲から、米津玄師が楽曲提供した『まちがいさがし』『パプリカ』のセルフカバーなど、多種多様な15曲が収録されています。また、そのうち12曲には現代音楽家の坂東祐大が編曲に参加しています。
「第62回日本レコード大賞 特別賞」や「第71回芸術選奨 大衆芸能部門 新人賞」といった数多くの賞を受賞しており、その芸術性や表現力が高く評価されています。
そんな「STRAY SHEEP」、一言で言うと、こんなアルバムです。
『「米津玄師らしさ」全開の、スケールの大きいアルバム』
詳しく解説していきます。
米津玄師「STRAY SHEEP」の特徴
米津玄師は「アルバム単位で音楽を楽しんでほしい」という信念があるのではないかと筆者は推測しています。
というのも、サブスク解禁が他のアーティストより遅れていたり、後述の通り「アルバムの構成」にこだわっていたりと、アルバム単位で楽しんでもらうことを前提として楽曲制作に取り組んでいるなあと感じる点があるのです。
ここでは、「アルバムの構成」に注目して「STRAY SHEEP」の魅力を紐解いていきたいと思います。
アルバムの構成
「STRAY SHEEP」は、大きく分けると次の3つのパートに分けることができます。
- 世界観を見せつけるダンサブルな第一幕
- 静かに聴き入る第二幕
- クライマックスに向かう疾走感のある第三幕
1つずつ見ていきます。
世界観を見せつけるダンサブルな第一幕
このパートは次の4曲を指します。
- 1曲目『カムパネルラ』
- 2曲目『Flamingo』
- 3曲目『感電』
- 4曲目『PLACEBO + 野田洋次郎』
この第1パートは、ノリが良く盛り上がる楽曲で構成されており、アルバムを始めから聴く人にとって非常に楽しいパートとなっています。
また、この4曲は総じて「どこか不気味さを感じる楽曲」であり、その特徴はまさに「米津玄師らしさ」と言えます。
つまり、第1パートを聴いた時点で、米津玄師ファンはすでにこの世界観に惹きつけられてしまうのです。
さらに面白いことに、この4曲、曲調がすべて異なるのです。米津玄師の楽曲の幅広さ、表現力の高さを痛感させられます。この曲順が、「米津玄師の表現力の高さ」をリスナーに届ける最適解なのかもしれません。
静かに聴き入る第二幕
このパートは次の5曲を指します。
- 5曲目『パプリカ』
- 6曲目『馬と鹿』
- 7曲目『優しい人』
- 8曲目『Lemon』
- 9曲目『まちがいさがし』
この第2パートは第1パートとは打って変わって、聴き入ってしまうような、繊細で儚さのある楽曲が続きます。
また、8曲目、つまりアルバム15曲のちょうど真ん中に「米津玄師の代表曲」とも言える『Lemon』が置かれており、アルバムへのこだわりを感じます。
クライマックスに向かう疾走感のある第三幕
このパートは次の6曲を指します。
- 10曲目『ひまわり』
- 11曲目『迷える羊』
- 12曲目『Décolleté』
- 13曲目『TEENAGE RIOT』
- 14曲目『海の幽霊』
- 15曲目『カナリヤ』
9曲目『まちがいさがし』からガラリと雰囲気が変わり、多彩で疾走感のある楽曲がラストまで続きます。
ロックナンバーの『ひまわり』、クラシック調の重厚感のある『迷える羊』、タンゴの要素を取り入れた気怠げな楽曲『Décolleté』、再びロックナンバーの『TEENAGE RIOT』、壮大で圧巻な世界観の『海の幽霊』、そしてラストを飾る、優しく温かみのある『カナリヤ』と、世界観を行ったり来たり。米津玄師の手のひらの上で転がされてしまいます。
また、曲順について、各楽曲をざっくり分類してみると、
ロック→壮大→静か→ロック→壮大→静か
となっており、リスナーを疲れさせない・飽きさせないように工夫されているのが分かります。
このように、「STRAY SHEEP」は構成が非常に練られており、聴き終わったときの満足感が凄まじいのです。
アルバムの壮大さ
「STRAY SHEEP」を聴いてみると、全体を通して「壮大さ」を感じると思います。もちろん、壮大な楽曲が多いこともありますが、アルバムの構成にも壮大さを感じさせる工夫が施されています。
筆者は、次の2つがアルバムに良い影響を与えているのではないかと考えました。
- 1曲目と14曲目
- 緩急のある構成
それぞれ解説していきます。
1曲目と14曲目
あらゆるショーや作品において、「はじめ」と「ラストの1つ前」は非常に大切です。
観客ははじめの5~10分でその作品の好き嫌いを決めてしまいます。つまり、「はじめ」は観客に最も大きな影響を与えます。
さらに、「ラストの1つ前」は映画に置き換えるとクライマックスであり、最も緊張感のある部分であり、最重要場面です。つまり、ここで観客の満足感が決まります。
20世紀はじめにアメリカで大流行したボードビル(1回の公演で8つほどのバラエティー豊かな演目が組まれる、ショー形式の大衆娯楽)では、花形スターはラストの1つ前に置き、それを引き立たせるように演目が組まれていたそうで、ここからも「ラストの1つ前」の大切さが分かります。
さて、改めて「STRAY SHEEP」について考えます。
「STRAY SHEEP」の「はじめ」と「ラストの1つ前」、つまり1曲目と14曲目は
- 1曲目『カムパネルラ』
- 14曲目『海の幽霊』
です。意図してなのかは分かりませんが、この2曲は共通点があります。
…そうです。両者とも「テンポが遅く、壮大な曲」なのです。もし意図して配置したのなら、米津玄師はこのアルバムを、スケールの大きいものにしたかったのだと推察できます。
アルバムを通して聴いたときに「世界観がすごかった」と感じるのはこの2曲の効果が大きいのではないかと筆者は考えています。
緩急のある構成
ここからは、「壮大さ」に注目して全体の構成を見ていきたいと思います。全曲の「壮大さ」をまとめると次のようになります。1は「静かな曲」、5は「壮大な曲」を表します。
この図から分かる通り、楽曲の「壮大さ」に緩急があります。また、1曲目・6曲目・11曲目・14曲目に「壮大な曲」があり、非常にバランスが良いです。このバランスによって、リスナーは最後まで疲れずに楽しむことができるのだと筆者は考えます。
「STRAY SHEEP」の収録曲を徹底解説
ここからは、個々の楽曲について見ていきます。
カムパネルラ
宮沢賢治の小説「銀河鉄道の夜」がモチーフとなった楽曲。静かで美しくリズムも一定なのに、壮大でストーリー性を感じます。
Flamingo
ソニーのワイヤレスイヤホン「WF-SP900」のCMソングに起用された楽曲。ファンク調のサウンドと日本民謡を取り入れた歌唱法が耳から離れません。
感電
TBSテレビ金曜ドラマ「MIU404」の主題歌として書き下ろされた楽曲。自然と体が乗ってしまうファンクナンバーです。Cメロの「変な世界に迷い込んだ感」が個人的に最高です。
PLACEBO + 野田洋次郎
RADWIMPSの野田洋次郎が参加した楽曲。ディスコ調のサウンドが非常にキャッチーで、夜のドライブで聴きたくなります。
パプリカ
米津玄師がプロデュースしたユニット「Foorin」(2021年9月27日解散)の楽曲をセルフカバーした楽曲。和楽器が使用されており、どこかノスタルジーを感じます。
馬と鹿
TBSテレビ日曜劇場「ノーサイド・ゲーム」の主題歌として起用された楽曲。広大な大地で一歩一歩足を進めるような、壮大で力強い楽曲です。
優しい人
シンプルなアレンジにストレートな歌詞が、いい意味で「米津っぽさ」がなく新鮮です。そのストレートな歌詞がめちゃくちゃ胸に沁みます。
Lemon
TBSテレビ金曜ドラマ「アンナチュラル」の主題歌として書き下ろされた楽曲。「オリコン週間カラオケランキング歴代連続1位獲得週数」を5年7ヶ月ぶりに更新(その前はゴールデンボンバー – 女々しくて)するなど、日本を代表する曲の一つといっても過言ではありません。
まちがいさがし
米津玄師がプロデュースした菅田将暉の楽曲のセルフカバー。菅田将暉の『まちがいさがし』とは曲調が大きく変わっており、両者を聴き比べるのも楽しいかもしれません。
ひまわり
今すぐ冒険に旅立つような、ロックテイストの楽曲。『LOSER』や『飛燕』が好きな人にはたまらない楽曲です。
迷える羊
大塚製薬のカロリーメイトのテレビCM「変わらないもの篇」のテーマソングとして制作された楽曲。まるでオペラのような歌唱と重厚なサウンドに圧倒されます。
Décolleté
「STRAY SHEEP」の中でも異彩を放つ、タンゴ調の楽曲。楽曲を通して感じる「気怠さ」が癖になります。
TEENAGE RIOT
マンダムのGATSBYのCMソングに起用された楽曲。パワフルなロックナンバーで、サビ前にグッとギアを上げる瞬間がいつ聴いても痺れます。
海の幽霊
映画「海獣の子供」の主題歌として書き下ろされた楽曲。壮大なオーケストラサウンドと美しい裏声に息を呑みます。
カナリヤ
アルバムのラストを飾る、心温まるバラード曲。MVは「そして父になる」や「万引き家族」などを手掛けた是枝裕和が監督を務めました。
おわりに
いかがでしたか?「STRAY SHEEP」をもう一度聴きたくなってくだされば幸いです。
Twitterでも音楽に関する情報を発信していますのでよろしければ訪問してみてください。
最後まで見ていただきありがとうございました!!